不動産の相続にかかる税金の種類は?計算方法や利用できる控除も解説
不動産を相続する際にかかる税金について不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
不動産の場合にのみかかる特有の税金もあるため、きちんと把握しておかないと予想外の出費に困ってしまうかもしれません。
この記事では、かかる税金の種類や計算方法、さらには税金を抑えるのに役立つ控除についても解説します。
不動産の相続時に発生する税金の種類
不動産を相続する際にかかる税金は、主に登録免許税と相続税の2種類です。
ここでは、これらがどのような税金なのかについて解説します。
登録免許税
登録免許税は、不動産の登記手続きをおこなう際に課される税金です。
登記とは、不動産の所有権を公的に証明するために、法務局で保管されている登記簿に記録する行為を指します。
登記には、所有権保存登記・所有権移転登記・抵当権抹消登記などさまざまな種類があります。
このうち、不動産を受け継いだ場合に必要になる登記は所有権移転登記の1種である相続登記です。
不動産の所有権が相続人へ移るため、この変更を法務局に届け出るために登記が必要となります。
この登記は令和6年4月1日から義務化されており、正当な理由なく登記を怠ると10万円以下の罰金が課せられるため、所定の期限までに必ず対応しましょう。
登記の期限は、不動産を受け継ぐ人が1人の場合は所有権の取得を知った日から3年以内、複数人の場合は遺産分割が成立した日から3年以内とされています。
登録免許税の納付は、法務局の窓口では収入印紙を使用するのが一般的です。
また、オンライン申請の場合には電子納付も選択可能ですが、現金納付を希望する場合は、事前に法務局に確認が必要です。
相続税
相続税は、亡くなった親や配偶者などから受け継いだ財産に対して課せられる税金です。
税率は課税対象の遺産額に応じて変動し、1000万円以下の最低10%から6億円超で最高55%まで幅があります。
ただし、課税対象の遺産額が基礎控除の枠を超えない場合には非課税となります。
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算でき、最低でも3600万円あるため税金がかからないケースも少なくはないでしょう。
ここでいう法定相続人とは、亡くなった方の配偶者・子・親(いない場合は祖父母)・兄弟姉妹(いない場合は甥姪)です。
たとえば、法定相続人が妻・子2人・祖父母・弟の計6人だと仮定すると、6600万円を超える部分にのみ税金がかかります。
基礎控除額を超える遺産を相続した場合には、相続税の申告が義務付けられています。
一方、基礎控除額以下の場合でも、特例や控除の適用を受ける際には申告が必要です。
詳細は、国税庁の公式ガイドラインを確認することをおすすめします。
不動産の相続時に発生する税金の計算方法
登録免許税・相続税の税額はケースにより大きく変わるため、ご自身の状況に合わせて正しく計算するのが重要です。
ここでは、これらの税金の計算方法について解説します。
登録免許税の計算方法
登録免許税は、固定資産税評価額に0.4%を掛けてあわせると求められます。
計算に用いる固定資産税評価額は1000円未満を切り捨てたものとし、計算結果の登録免許税は100円未満を切り捨てます。
たとえば、固定資産税評価額が1500万円の場合、登録免許税は1500万円 × 0.004 = 6万円です。
また、固定資産税評価額は市区町村によって毎年または3年ごとに見直しがおこなわれ、変更があれば登録免許税の額も変動するため最新の評価額を確認するのが重要です。
固定資産税評価額が確認できる固定資産評価証明書は役所で取得できます。
不動産を受け継ぐ場合、手元に現金が入ってくる訳では無いため、納税資金はご自身で用意する必要があります。
そのため、登録免許税がいくらになるのかは事前にきちんと計算しておきましょう。
相続税の計算方法
相続税の場合は計算すべきものがいくつかあるため、順を追って解説します。
まず、遺産総額の計算をしましょう。
遺産総額には現金、預貯金、不動産などのすべての財産が含まれ、不動産の価値は相続税評価額を用いて評価されます。
この際、借入金や未払金などの負債が残ってる場合は資産から差し引いたものを遺産総額とします。
次に計算するのが課税対象になる遺産総額で、先程計算した遺産総額から基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引くと計算可能です。
この課税対象の遺産総額に法定相続分として定められた割合を掛け合わせると自身の相続額が求められます。
最後に、相続税を計算します。
計算式は「相続額 × 税率 - 控除額」で、税率と控除額は変動するため国税庁のホームページで確認しましょう。
実際には、遺産分割協議によって分配割合が変わる場合も多いため、割合が確定した段階で改めて計算し直すのをおすすめします。
不動産の相続時の税金を抑えられる控除制度
税負担を軽減できる制度として代表的なものには、住宅資金贈与制度・配偶者控除・相次相続控除があります。
ここでは、これらの制度がどのような条件で適用され、どの程度税負担が軽減できるのかについて解説します。
住宅資金贈与制度
住宅資金贈与制度とは住宅の取得や増改築を目的として父母や祖父母などの直系尊属から贈与を受けた場合、一定の額まで贈与税が非課税となる制度です。
住宅資金贈与制度では、省エネ基準を満たす住宅については最大1,000万円、一般住宅の場合は最大500万円まで非課税となります。
ただし、この制度の非課税枠は贈与を受けた年の税制改正により変更される可能性があるため、最新の情報を確認することが重要です。
省エネ基準とは住宅の断熱性や耐震性、バリアフリーな作りとなっているかなどの観点で設定されている基準です。
その他、贈与を受けた年の所得が2000万円以下であるなど、住宅資金贈与制度の利用には複数の条件があるため、国税庁のホームページでご自身が対象となるのかを確認しましょう。
また、この制度を利用する場合は贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に税務署に申告する必要があります。
将来的に住宅の購入などを検討している方は計画的に贈与をすれば税負担を抑えられるため、この制度の利用を検討してみてください。
配偶者控除
配偶者控除とは、配偶者が相続する遺産総額が1億6000万円以下、または法定相続分の範囲内であれば非課税となる制度です。
配偶者控除の適用条件は3つあります。
まず、戸籍に配偶者として記載されている必要があります。
そのため、事実婚のように婚姻届を提出していない状態では適用されません。
次に、相続税の申告期限までに遺産分割が完了している必要があります。
遺産総額が確定しないと、そもそも控除が適用できるか、額の範囲内かを判断できないためです。
申告期限は死亡後10か月以内ですが、申告期限後3年以内の分割見込書を提出すれば、期限を3年間延長可能です。
最後に、税務署への申告書の提出が必要なため、忘れずに申告しましょう。
相次相続控除
相次相続控除とは、10年以内に複数回の相続が発生した場合に、遺産の一部が控除される制度です。
控除額は遺産に対して一定の割合をかけ合わせて計算され、前回からの経過年数が1年以内の場合は90%、2年以内の場合は80%、3年以内の場合は70%と1年毎に10%ずつ減っていきます。
また、この制度は前回相続税を納めていて、かつ、今回の相続人が法定相続人である場合にのみ適用できます。
実際に相次相続控除を適用するには、相次相続控除の計算書を税務署に提出する必要があり、申告期限は被相続人が亡くなった日から10か月以内です。
立て続けに相続が発生した場合、とくに税負担を大幅に軽減できるため、積極的に活用していきましょう。
まとめ
不動産相続時には登録免許税と相続税の2種類の税金がかかります。
また、税負担を軽減できる制度として、住宅資金贈与制度・配偶者控除・相次相続控除が存在するため、積極的に活用しましょう。
また、これらの制度を活用するには期限内に申告する必要があるため、計画的な対応が重要です。